たこちゃんとお母さん  前編

たこちゃん。

診察台の上でウロウロすることもなく、
いつも慎ましく控えめな女の子。

昨年末、
たこちゃんの胸には乳腺腫瘍が、
お腹の中には腸の腫瘍が見つかりました。

猫の乳腺腫瘍は悪性の可能性が高く、
腸の腫瘍も腺癌やリンパ腫といった
悪性のものがほとんどです。

ただ、確定診断のためには、
手術で切除して、
病理検査をする必要があります。

悪性なら、手術しても再発や転移の可能性が高く、
完治は望めないかもしれません。

高齢のたこちゃんに手術をするか、
お母さんと何度も話し合い、ずっと一緒に悩んできました。

痛い思い、怖い思いをしても、
治らないかもしれない。
それなら、年老いてからつらい思いはさせたくない。
お母さんの思いはよくわかりました。

手術はせず、
定期的な点滴をして、
体力を維持してやりながら、
経過を見ていくことになりました。

一つだけでもつらいのに、二つも病気を抱えて、
それでも、
私たちにはたこちゃんが、
与えられた人生を、
恨むわけでもなく、
嘆くわけでもなく、
ただただ淡々と
慎ましく生きているようにうつりました。

次第に、腸に触るしこりが大きくなり、
だんだんと、食べなくなってきました。
大きくなったしこりが腸をふさぎ、
便が出なくなってきたのです。

これは、近い将来起こりうることとして
お母さんにもお話していて、
もしそうなったら、完治のためではなく、
腸を通してやるために
手術が必要であることをお話していました。

でも、実際にその残酷な現実が
目の前に迫ってくると、
お母さんは、手術に踏み切れず、
悩んで悩んで悩まれました。

癌で弱っているから、
手術に耐えられなくて亡くなるかもしれない。
手術に耐えてくれたとしても、
結局癌で治らないなら、
痛い思いさせるだけかわいそう…

でも、腸が閉塞して食べられない…
診察の度に体重が100gずつ減っていく…。
その状態で、日に日に弱って亡くなっていく…。
それもお母さんにとっては耐え難いことでした。

何日も何日もお母さんは悩まれ、
私たちともお話して、
ついに手術を決意してくださいました。

「たこが、食べたいって言ってる。」と
お母さんはおっしゃいました。

(後編へつづく…)

たこちゃんとお母さん  前編」への1件のフィードバック

  • もかまま

    たこちゃん 手術がんばって!
    おいしいもの食べたいよね。
    病気をやっつけられないのなら せめておいしい物 大好きな物は食べたい時に食べてもらいたいです。
    (食べさせてやらなかったことは今でも後悔しているので) 好きな物食べたら その分元気になってくれると思います。
    津村先生 ぜったいたこちゃんを食べれるようにしてあげてや!

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