去勢・避妊手術のこと

なぜ去勢手術・避妊手術が必要なのでしょうか?

望まれない動物を増やさないため・・・

去勢・不妊手術をしていない動物を外に放していると、飼い主の方の知らないところで交尾し、繁殖します。その結果、きちんと飼ってもらえないかわいそうな仔犬や仔猫を増やしてしまうことになります。特に雄猫は、外に出て交尾をしても、子供を産みませんから、家で仔猫が生まれて困るということがなく、飼い主の方の意識も低くなりがちで、去勢手術しないまま外に出しておられる場合があります。平成21年度に日本で殺処分された犬の数は64,061頭、猫の数は165,771頭で計229,832頭だったそうです(環境省自然環境局 発表資料より抜粋)。飼い主の方や、動物に関わる方一人一人が責任を持ってこのことを考えていけば、この数はもっともっと減らせるはずです。

病気予防のため

もう一つの大きな理由は、その子自身の健康のためです。去勢手術や不妊手術には、性ホルモンが原因となる病気に対する予防効果があることがわかっています。

前立腺肥大や前立腺炎などの前立腺疾患や、精巣の腫瘍、肛門周囲腺の腫瘍、会陰ヘルニアなどの病気が予防できます。特に、精巣が陰嚢に入っていない状態(潜在精巣)があると、正常な場合の8倍も腫瘍になる可能性が高くなります。

2.5歳までに不妊手術をすると、乳腺腫瘍の予防効果があることがわかっています。(初回発情前に手術すると99.5%、1回目の発情後では92%、2回目の発情後では74%の予防効果があり、それ以降は予防効果がありません。) また、発情時に膀胱炎になることがありますが、手術をすることで防げますし、子宮蓄膿症や卵巣嚢腫などの予防にもなります。

若齢のうちに不妊手術をすると、乳腺腫瘍の予防効果があることがわかっています(6ヵ月齢までに手術すると91%、7~12カ月齢では86%、13~24カ月齢では11%の予防効果があり、24カ月齢を超えると予防効果はありません。)。また、子宮蓄膿症などの子宮や、卵巣の病気の予防になります。

性的行動によるストレスを増やさないため

性成熟(生後6カ月くらい)前に去勢手術をすることで、他の動物や人に対する性的な行動(マウンティング)や、縄張りを示すためのマーキング(後ろ足を上げて、あちこちに尿をかけて臭いをつけること)をほとんどの場合防げます。また、発情中の雌の匂いでいらいらすることも減ります。

性成熟(生後6カ月くらい)前に不妊手術をすることで、他の動物や人に対する性的な行動(マウンティング)をほとんどの場合防げます。また、発情により食欲が落ちたり、いらいらしたりすることもなく、発情出血ももちろん無くなります。

去勢手術をしていない雄猫は、雌猫を求めて外に出たがり、外でけんかして、けがをしたり伝染病をうつされたりします。また、外に出してしまうと交通事故に遭うこともあります。去勢手術でこういったことを予防しましょう。また、攻撃的になることも減るので、穏やかに日常生活を送れます。

不妊手術をしていない猫は、定期的に発情が来て外に出たがり、交通事故にあったり、伝染病をうつされたりします。また、発情のたびに大きな声で鳴いたり、食欲が落ちたりしますので、不妊手術をすることで穏やかな日常生活が送れます。

去勢手術のQ&A

去勢手術はどんな手術なのでしょうか?

・去勢手術(雄):全身麻酔で皮膚を切開し、両方の精巣を摘出します。精巣が陰嚢の中に入っておらず、お腹の中に残っている状態がある場合は開腹手術が必要です。手術では、体内に使う手術用の糸は、半年くらいで溶けて無くなる物を使用します。皮膚は、炎症反応をできるだけ抑えるため、溶けない糸を使用します。手術は通常の去勢手術の場合、30分程度で終わります。

・不妊手術(雌):全身麻酔で開腹手術により卵巣と子宮を摘出します。手術では、体内に使う手術用の糸は、半年くらいで溶けて無くなる物を使用します。皮膚は、炎症反応をできるだけ抑えるため、溶けない糸を使用します。手術は通常1時間程度で終わります。

予約は必要でしょうか?

必要です。手術は麻酔下で無菌的に行いますので、前もって手術室や器具、スタッフの準備が必要です。必ずご予約下さい。また、ご都合が悪くなった場合も必ずご連絡下さい。

手術から抜糸までの流れを教えて下さい。

手術前日: 手術の前日は、夜8時以降絶食と絶水が必要です。(すごく水を飲みたがる場合や、飲水が必要な子はその限りではありませんので、手術の御予約時にご説明いたします。)

手術当日:手術当日は10時から12時までの間に連れて来ていただいて、診察の上お預かりし、術前検査を行い、点滴を始めます。

手術後:去勢手術の場合は、手術後、麻酔がしっかり覚めてから夕方以降に、不妊手術の場合は翌日お迎えに来ていただきます。

手術の翌日:手術の翌日から一週間、抗生物質を飲ませてもらいます。

抜糸:抜糸は、手術から10日後に行いますが、手術後から抜糸の翌日くらいまでは、術創をなめないように、首の周りにエリザベスカラーをつけておいてあげてください。また、不妊手術の場合、後足で創部をかいてしまうことがあるので、原則として服を着せてお返しします。

・ 退院後、抜糸まではお家で過ごせます。ただ、創部が汚れないよう、また安静にしていただくため、犬の場合、家の中で排泄ができる子は散歩を控えてあげてください。外でしか排泄しない子は、抱っこして連れて行き、トイレのときだけ歩かせるようにしてください。

いつ頃から手術ができるようになりますか?

当院では、ワクチン接種を終えた性成熟前の5カ月齢から手術をしています。5カ月齢ならだいぶ成長して、絶食も問題なくできるようになっていますし、性成熟後では、乳腺腫瘍の予防効果が低下したり、マーキングしたりするようになってしまうからです。  手術を受けられる前にできるだけワクチン接種を終えておかれたほうがよいでしょう。最終のワクチンは犬では4カ月齢以降に、猫では3カ月齢以降にしてあげてください。

手術によるデメリットはないのでしょうか?

・ 手術後には性的なエネルギーを使わなくなるので、代謝が落ち、太りやすくなることが多いので、低カロリーのフードを量を決めて与えるようにしてください。

・ ホルモンの変化により、手術後しばらくしてから尿失禁が起こることがありますが、頻度は少なく、治療で改善することがほとんどです。ただし、高齢になってからの去勢手術で尿失禁が起こった場合は、ずっと続いてしまうこともありますので、高齢になる前に手術されることをお勧めします。

・ 手術後に性ホルモンが出なくなることによるかゆみを伴わない脱毛が起こることがありますが、ごくまれです。

費用はどのくらいかかりますか?

年齢や体重、併発症によって術前検査が異なりますので、直接問い合わせていただいたほうがよいと思いますが、目安として
▼去勢手術の場合
6歳までは23,000~32,000円
7歳以降は27,000~40,000円

▼不妊手術の場合
6歳までは35,000~56,000円
7歳以降は38,000~63,000円
かかります。

手術後に痛そうだったらどうしたらいいですか?

痛そうな様子が見られたら、鎮痛剤を使ってあげることで改善する場合がほとんどです。また、初めから飼い主さんが希望される場合も使うことができますので、遠慮なさらずにおっしゃってください。