とたんに、
今まで各々の仕事をされていた先生方が、
一斉に駆けつけ、
血管に留置針を入れる人あり、
気管チュ-ブを用意する人あり、
心電図をつける人あり、
点滴を用意する人あり、
手術室を準備する人ありと、
皆があうんの呼吸で当然のように持ち場を心得、
あっという間に救命救急チ-ムが編成されてしまったのです。
「減圧できるかやってみる。胃カテ取ってくれ!」
悪魔のような声が響いたのは、このときでした。
「ひょえ~~、これが教科書にのってた鼓音か~」と、
とりあえずはかわいそうなシェパ-ドくんのお腹を叩いて勉強させてもらった後は、
邪魔にならないよう素早く身をかわし、
壁と一体化し、息をひそめる…という、
その日習得した行動パタ-ンをとっていた私は、
この瞬間、先生方全員の
熱-い視線を浴びることになったのです。
その目は、
「ワレワレハ、テガ、ハナセナイ。オマエシカ、イナイ」
と言っていました。
泣きそうでした。
胃カテってどんなん?
どこにあるねん?
「入らんかったら、完全に捻転や!緊急オペや!できるだけ太いの持って来い!!」
うわぁ~~!
もう、聞いてる暇はないで!
管で、太かったらええんやな-!?
私は、その日私に任された唯一の仕事である
「入院室の掃除」で使った水道のゴムホ-スを思い出し、
入院室に駆け込みました。
うぅ・・・えい!!
適当に切って差し出しました。
「すんません!これで!」
「なんじゃこりゃあ!??・・・まあ・・・ええか」
結局そのシェパ-ドくんは、
チュ-ブ(正しくはホ-ス)が通らず、
胃捻転と診断され、
そのまま緊急手術となり、
私は初めて胃固定術を見ることができ、
麻酔から覚めて
むくっと起き上ったシェパ-ドくんに感動し、
帰路に就いたのは、午前3時でした。
(まだ、つづく・・・)