サンタ

2004年12月25日のXmas、その子はやって来ました。

主訴は、「2日前からぐったりしている。」

すでに意識はなく、身体は冷たく、心拍は微弱・・・と、
聴診中に突然心停止!!

挿管、陽圧呼吸、心マッサ-ジ・・・
スタッフ総動員でエマ-ジェンシ-処置・・・

「なんで2日前からやのに今やねん!」
「どう見ても10kgはありそうな子がなんで5、8kgしかないねん!」
「右後肢、膝から下、偽関節形成してる。足が変な方向向いて曲がらない。なんで??」
「なんで、爪がこんなにまっすぐで魔女のように長いの?」
「何でパッドがこんなに猫のように柔らかいねん?」

皆の心の中に様々な疑問が渦巻く中、
ラッキ-と呼ばれていたその子は、
奇跡的に心拍を取り戻し、自発呼吸も出てきました。

一人暮らしだという連れてきた男性は、
蘇生処置の最中に「気分が悪い」とその場を離れ、
「お願いします。」と帰って行きました。
「ラッキ-頑張れ!」とか「早く連れてくれば良かった・・・」
という言葉はなく・・・。

翌朝、様子を電話しても、
「用があるから今日は面会に行けない。明日行く。」

事情を聴くと、
家にいるのは午後6時から深夜12時までだけ。
帰って来れないこともある。
餌は帰って来たときにやってる。
(・・・ということは、帰って来なかったらやってないってことやん!)

仔犬の頃、自転車のかごから落として
後ろ足が折れた。
病院に連れて行ったが、金がないので手術はせず、
ギブスだけにした。
再診も行かなかった。
それで曲がったまま。

つまり、ラッキ-は、
ずっと家の中でただひたすらお父さんの帰りを待ち、
ごはんも充分にもらえず、散歩も連れて行ってもらえず、
骨折しても治療もしてもらえず、
監禁状態で育てられ、
体重が半分に減って、
死の直前に病院にやって来た…
というわけです。

皆の懸命な治療で、
徐々に意識レベルも回復し、
立てないまでも頭を起こすことはできるようになったラッキ-は、
エマ-ジェンシ-から2日後にやって来た
その男性の顔を見るや否や、
ちぎれんばかりに尾っぽを振ったのです。

後遺症が残る可能性、介護が必要な可能性等
今後のことをお話しすると、
「無理だ…。
年明けまで入院させて、もう少し元気になるのを見たい気もするけどなぁ。
でも、費用が無理やしなぁ…。
連れて帰るしかないわなぁ…。
でも死ぬやろなぁ…。
いっそ死んだ方がええんちゃうか。」

他人事ですか??
どうしてこうなったのですか?

この男性には、ラッキ-の生涯の面倒を見る覚悟は
皆目無いようでした。
色々とお話ししても、自分を改める気はさらさらなく、
責任の取れる人ではありませんでした。

人なら、「未必の故意」として裁かれるような出来事です。
された方は、訴えるでしょう。

でも、犬という奴は、こんなおっさんにも
尾を振って、大好きだと言うのです。

一生懸命治療、看護にあたった看護師は、
おっさんの言葉を聞いて号泣しました。
その時のカルテの記録です。

「〇〇さんの言葉に何とも言い表せないもどかしさや怒り、
悲しみを感じました。
みんながすごく頑張って、一時は心停止したのに改善し、
新しく命を頂いたのに(それだけラッキ-は生きたかったのだと思う)
それを見ていてもそんな言葉が出てしまう
〇〇さんをどうしても理解できませんでした。」

人として許せない。
この人には返せない。

担当医と看護師たちが私に
「病院で面倒を見させてほしい」と頼んできました。

安易に決められることではありません。
その瞬間に私たちにも責任が発生します。
病院は保護施設ではありません。
ケ-ジにも限りがあり、人手にも限りがあります。
患者の動物たちへの治療に支障があってはなりません。
皆で話し合い、介護の大変さも熟考し、
獣医師、看護師共に覚悟を決めて、
引き取ることにしました。

おっさんに「助かった」と思われると本末転倒なので、
飼い主の責任として少なくともそれまでの入院費を支払うよう約束し、
「わかりました。」と言っていたにもかかわらず、
以降、電話にも出ず、手紙にも反応なく、未払いのまま。

ラッキ-は、Xmasに来た子やからと
「サンタ」と名付けられました。

幼いころの社会化の大事な時期を
ずっと一人で部屋の中に閉じ込められていたサンタは、
いまだに人や車が怖くて、
病院の勝手口から北関目公園の入り口まで
おどおどしながらお散歩するのがやっとです。
それでもお散歩には行きたいようで、リ-ドを持つと小躍りして喜びます。

人間不信になってもおかしくないのに、
私たちのことを心から慕ってくれて、
あかんたれで甘えたやけどかわいいやつです。

猫たちにはバカにされ、いつも下っ端で情けないやつですが、
そのおバカキャラがハ-ドな毎日を送る私たちを癒してくれています。
「もう~サンタはあほやなぁ~」と言いながら、
何だかほっこりさせてくれる魅力の持ち主です。
おっさんよりもはるかに徳が上です。

人と動物は持ちつ持たれつ。
これだけの癒しをもらっている分、
食べること、危険から守ってやること、安心させてやること・・・
を一生懸命努力して、お返ししないと。
エエとこ取りでは勝手すぎますよね。
犬のボスにすらなれない人たちばかりの世の中では、
大阪の未来はないぞ!!

患者さんをおっさん呼ばわりして申し訳ありませんでした。
でも、本当は実名を公表したいくらい怒っています。
こんな人が一人や二人でないことにも、
心から憤っていますし、危惧しています。
そんな生活を20年以上もやっていますと、
人間不信に陥りそうな時もあったくらいです。

でも、一生懸命に治療、看病されている皆さんとお話ししているとき、
サンタのすやすやと眠っている顔を見ているとき、
人間の力もまだ捨てたもんじゃないな・・・とまた勇気が湧いてきます。

サンタの生涯を引き受けたんだから、
最後まで幸せでいられるよう、
ボスであり続けられるよう、
私たちも頑張ります!

(カメラが不思議で思わず覗き込むおバカなサンタ)

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